ここ佐田岬半島は傾斜地が多く、わずかな平地には家が建ち、畑は傾斜を削った段々畑になっています。
その段々畑を形成しているのが石垣です。
この石垣は昔、この半島に住み着いた人々が土地を削り築き上げたもの…。
当時の労力は大変なものだったででしょう。
当初、その段々畑で作られた作物は芋や麦だったといわれています。
その後、みかんの栽培が始まるとあっという間にみかん栽培に切り替わったようです。
そのようにして始まった柑橘栽培ですが、この半島の自然環境と段々畑の持つ特異性が柑橘の栽培に適していたということでしょう!
柑橘栽培にとって、また、柑橘園の維持において石垣の果たした役割は重要だったと考えます。
園地によって様々な石を巧みに積み上げてきた労力と技術!
急傾斜が多い半島の地形で畑を作るには斜面を削るしかないのが現状です。
その斜面を削ると補強しておかなければ崩れてしまいます。
特にここ佐田岬半島の地形は崩れやすい土質になっていて、大雨が降ってもよく土砂崩れを起こしてしまいます。
その土砂の流出を防ぐ効果が石垣だったと考えます。
土だけではもろくなってしまうところを石を巧みに積み上げる事によって斜面を強固にしたものだと思われます。
コンクリートの普及していない昔、人々は開拓した土地の中に埋もれている石を積み上げることによって、作物の栽培としては不要の石を石垣に利用したのです。
それを想像させるのが、各園地で使われている石質の違いです。石の大きさもさることながら、質も全く違ったものがあります。
各園地の石垣をみていると、その土地の特徴がよく分かります。
柑橘園における石垣の機能とは…!?
今や佐田岬半島の代名詞ともなっている柑橘栽培。
この半島の自然を上手く利用し、さらに昔の人々が作り上げた段々畑を柑橘の栽培に適合するように工夫してきた結果だろうと思います。
この石垣は段々畑の土の流動化を防ぐ効果とともに土壌の水はけを良くする効果もあります。
降った雨がいったん地面に染み込み、石垣の隙間があることで水分を外へ排出したり蒸発させたりします。
また、石垣が太陽の光で反射することにより柑橘の木により光が当たるようになること、そのことで冬場の寒さを和らげる効果があると思われます。
そして、最近になってこの景観が注目され始めました。
段々畑と防風垣の組み合わせはこの半島独特のもので、自然と調和し、その機能も認められています。
これをひとつのアピールポイントとして柑橘販売への付加価値として繋げていくことがこれからの課題だと考えます。
柑橘農家従事者の高齢化や減少により石垣の手入れが難しくなってくるなか、その保全をいかに進めていくことができるか、これからの栽培農家に求められることになりそうですね!